朝日新聞(2004年3月17日 水曜日 28面 京都版)


玉露の手もみ技伝授
京田辺の山下さんらインド・ダージリンへ

Asahi shinbun 2004.March 17

  紅茶の産地、インド・ダージリンの茶園主から「日本茶の玉露の手もみ技法を伝授してほしい」と頼まれた京田辺市普賢寺公貴谷、茶業山下壽一さん(70)が、ダージリンに向けて出発した。「玉露の手もみ製法の名人」といわれる山下さんは、日本とインドの友好にも結びつけたい、と張り切っている。

 茶園主は、ダージリンで最も古いといれるマカイバリ茶園4代目オーナーのスワラジ・クマール・バナジーさん(56)。約250ヘクタールという広大な茶園を持っており、有機栽培の最高紅茶を生産しているという。

 バナジーさんは昨年6月、日本の輸入元の紹介で山下さん宅を訪れた。山下さんは、全国茶品評会玉露部門で1等の1席を7回受賞、玉露の手もみ製法の名人として知られる。バナジーさんは近くの市玉露製茶技術研修工場で4日間、蒸した葉を両手で左右に動かし、焙炉(ほいろ)の上でもみながら乾燥させる「横まくり」の製法を学んだ。

 緑茶も紅茶も原料は同じ茶葉だが、加工方法が違う。紅茶は葉を完全発酵させるのに対し、緑茶は不発酵で蒸したものだ。半発酵だと烏龍茶になる。最も手間がかかり、高価なのが玉露だという。

 だが、いい玉露をつくるのには、経験による勘とコツを身につけることが必要。バナジーさんは、山下さんに「自分が作った茶を見てもらい、販売できる玉露づくりにこぎ着けたい」と教えを依頼した。

 インドに向かったのは、山下さんのお弟子で手もみ玉露の後継者杉田充さん(24)、親類の茶販売業田宮正康さん(44)ら。15日に出発、17日から3日間、ダージリンの製茶工場でバナジーさんと従業員らに指導、22日に帰国する予定だ。

 山下さんは「緑茶づくりが軌道に乗れば、インドの人たちの働く場にもつながる。小さな民間外交だが、頑張ってきます」と話していた。

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