朝日新聞(2004年3月25日 木曜日 28面 京都版)

煎茶の技 インドで伝授
京田辺の山下さんら「いずれ世界市場に」

Asahi shinbun 2004.March 25

 

 「インドの茶葉で玉露を作ってみたい」というインド・ダージリンの茶園主の依頼で、現地を訪れていた京田辺市普賢寺公家谷、茶業山下壽一さん(70)ら4人がこのほど帰国した。山下さんは「日本の緑茶の品種とは異なっていたが、何とか煎茶が作れた。将来、世界の紅茶市場に煎茶が加われば、日本の茶業界にも好影響が出る」と手応えを感じていた。

 山下さんらは、ダージリンのマカイバリ茶園にオーナーのスワラジ・クマール・バナジーさん(56)の依頼を受け、3日間滞在した。茶園では、かつて山下さんから手ほどきを受けたバナジーさんが、従業員たちにも手もみ技法の理論を教えていた。

 だが、準備されていた茶葉の蒸し器、手もみをする焙炉(ほいろ)は使えなかった。蒸し器は現地で家庭用のものを調達、焙炉は持参した和紙を鉄板に張って作った。茶葉は新芽が6キロ摘まれていたが、葉先が硬く、手もみ玉露には不向きだったため、手もみ煎茶の技法を指導した。

 インドでは、茶葉は直射日光に当たったものでないと受け入れられないという。「日本では手もみ玉露用は、新芽に直射日光が当たらないよう、茶園に覆いをかける」などと伝えると、「工夫して手もみ玉露を完成させたい」と意気込んでいたという。

 山下さんは「紅茶の本場だけに、茶園の条件は最高だった。手もみした煎茶にはコクがあり余韻が残った。世界市場で受け入れられると思う」と話していた。

手もみの煎茶づくりを指導する山下壽一さん=インド・ダージリンで、田宮正康さん撮影

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